2012年1月10日火曜日

文武元年八月庚辰詔曰

巻一

文武元年八月庚辰

詔曰現御神止大八嶋國所知天皇大命良麻止詔大命乎集侍皇子等王等百官人等天下公民諸聞食止詔高天原尓事始而遠天皇祖御世御世中今至麻弖尓天皇御子之阿礼坐牟弥繼繼尓大八嶋國將知次止天都神乃御子隨母天坐神之依之奉之隨聞看來此天津日嗣高御座之業止現御神止大八嶋國所知倭根子天皇命授賜比負賜布貴支高支廣支厚支大命乎受賜利恐坐弖此乃食國天下乎調賜比平賜比天下乃公民乎惠賜比撫賜牟止奈母隨神所思行佐久止詔天皇大命乎諸聞食止詔是以百官人等四方食國乎治奉止任賜幣留國々宰等尓至麻弖尓天皇朝庭敷賜行賜幣留國法乎過犯事無久明支淨支直支誠之心以而御稱稱而緩怠事無久務結而仕奉止詔大命乎諸聞食止詔故乎如此之状乎聞食悟而款將仕奉人者其仕奉礼良牟状隨品品讃賜上賜治將賜物曾止詔天皇大命乎諸聞食止詔

仍免今年田租雜徭并庸之半又始自今年三箇年不收大税之利高年老人加恤焉又親王已下百下百官人等賜物有差令諸國毎年放生


六九七年八月十七日。
詔曰。
あきつ御神と 大八嶋國 知ろしめす 天皇が 大命らまと 詔りたまふ大命を
集い侍る 皇子ら 王ら 百官人ら 天下公民、諸々 聞し食せと 詔る
高天原に 事始りて 遠き 天つ 皇祖の 御世々々 中今に 至るまでに
天皇が御子の あれ坐さむ いや繼々に 大八嶋國 知ろしめすべしと
天つ神の御子 隨もて 坐す 神の 依さし奉りしまま 聞看來し
天つ日嗣 高御座の 業と あきつ御神と 大八嶋國 知ろしめす 倭根子天皇の
命 授け賜ひ 負ひ賜ふ  貴き 高き 廣き 厚き 大命を 
受け賜はり 恐み坐して  この食國 天下を 調のへ賜ひ 平らげ賜ひ
天下の公民を 惠み賜ひ 撫で賜はむなもと 
神所思行さくと 詔る
天皇が 大命を  諸々 聞こし食せと 詔る
ここに  百官人ら 四方つ食國を 治め奉れと 任せ賜へる 國々 宰らに 至るまでに
天皇 朝庭 敷き賜ひ 行賜へる 國の法を過犯事無く 明き 淨き 直き 誠之心もちて
御稱稱て 緩み怠る事無く 務め結て 仕へ奉れと 詔る 大命を
諸々 聞せ食せと 詔る 故を 如此之状を 聞し食し 悟りて 款將仕奉人は
其の 仕へ奉礼らむ状の隨に 品品 讃め賜ひ 上げ賜ひ 治め賜ふべき物ぞと 
詔る  天皇の大命を 諸々 聞し食せと 詔る


仍りて
免今年田租雜徭并庸之半       今年の田租、雜徭、并て庸之半を免す。
又始自今年三箇年不收大税之利   又、今年より始めて三箇年、大税之利は収めず。
高年老人加恤焉             高年の老人に恤を加う。
又親王已下百下百官人等賜物有差 又、親王以下百官人等に物を賜うこと差有り。
令諸國毎年放生
              諸國をして年毎に放生せしむ。

所謂宣命体の読み方は難しい。
当時のヤマト言葉と漢字語の混交であり、
文言の日本語が形成されていくとば口の言語表現の特例だからだ。

集侍を「うごなはれる」と訓むなど言語史的には正しいのかどうか分からない。
ただ歴史的文献としての必要上の解読に大きな差は生じないなら
読みやすく読むことも大切だ。その上で歪みが問題なら正せばいい。
「集い侍する皇子ら」と「集侍はれる皇子等(うごなはれるみこたち)」との差がそんなに大きいだろうか。
通常の漢文読みを基本に和語を適切に入れて全体をまず理解できることが第一目標だ。

「天都神乃御子 隨母天坐 神之依之奉之隨 聞看來此天津日嗣高御座之業」

天神の御子 随母 天坐 神の依させ奉りし隨(まま)に 聞看來此 天つ日嗣ぎ高御座の業

天神の御子ながらも 天にいます神の依さし奉りしままに「聞看來」 (宣長の追加) この天つ日嗣ぎ高御座の業

この部分もそうだが宣長国学を漢文解読に持ち込んだままの国史大系本は問題が多い。
それを十分に批判的に乗り越える視座が確立しているのか岩波版、小学館版でも確認できない。
そういう意味で完全に依拠していい校訂版はないのかも知れない。



あきつみかみと おおやしまぐに しろしめす すめらが おほみことらまと のりたまふおほみことを
うごなはれる みこたち きみたち もものつかさたち あめのしたの おほみたから もろもろ きこしめさへと のる
たかまのはらに ことはじまりて とほき すめみおやの みよみよ なかいまに いたるまで 
すめらがみこの あれまさむ いやつぎつぎに おほやしまぐに しらさむつぎてと
あまつかみのみこながらも  あめにいます かみの よさしまつりしままに
あまつひつぎ たかみくらのわざと あきつみかみと おほやしまぐに しろしめす やまとねこすめらみことの
さずけたまひ おひたまふ  たふとき たかき ひろき あつき おほみことを 
うけたまはり かしこみまして  このおすくに あめのしたを ととのへたまひ たひらげたまひ
あめのしたの おほみたからを めぐびたまひ なでたまはむなもと かむながらおもほしめさくと のりたまふ
すめらが おほみことを  もろもろ きこしめさへと のる
ここに  もののつかさたち  よものをすくにを をさめめまつれと まけたまへる くにぐに みこともちどもに いたるまでに
すめらがみかどの  しきたまひ おこなひたまへる くにののりを あやまち おかすことなく あかき きよき なほき まことの こころをもちて
いやすすみにすすみて たゆみ おこたることなく つとめ しまりて つかへまつれと のる おほみことを
もろもろ ここしめさへと のる かれを かくのさまを きこしめし さとりて いそしく つかへまつらむ ひとは
その つかへまつらむ さまのままに しなしな ほめめたまひ あげげたまひ をさめたまふべきものぞと 
のりたまふ  すめらのおほみことを もろもろ きこしめせと のる

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